はじめに
みなさんこんにちは。とらちゃんです。
『山遠征|利尻』では、大学の同期と共に訪れた、日本最北の百名山・利尻山での登山について、当時の記憶を辿りながら綴ります。どうぞお楽しみください。

出発前
日本の北の北。
あまりの遠さに、現実離れした場所のように感じていた。
そんな利尻礼文に、今回ワンゲル(既卒)の同期2人と行くことになった。
一人目は、
旅の計画を立てるために集まろうと、タコパ(たこ焼きパーティー)を提案してくれたモジャモジャ頭の男、この人 モジャ男。
しかしながら、たこ焼きを焼きながらできることなんてほとんどない。お酒を飲んで歌謡祭を見るくらい。旅の計画を立てられるだなんて、とんだ勘違いだった。
二人目は、
焼酎片手に昭和歌謡を熱唱するロマンの男、この人 ロマ男。
今回、院試を目前に控えているにもかかわらず、はるばる利尻まで来てくれるらしい。さすが。
「計画、何も決まらなかったね!」と、それを何も問題に感じていないように笑い、解散してから二週間。もう一度集まって、次こそはちゃんと計画を立てようということになったのだが、私がコロナにかかったせいで流れてしまった。
かくして私たちの無計画 利尻旅は始まった。
利尻上陸
9月頭、私はひとり船の甲板にいた。
そう、今回の旅は現地集合なのである。
早朝の稚内を出発した船は、利尻島に向かって、静かな海を進んでいく。甲板に出ると、洋上に浮かぶ、富士山のような美しい山が目に飛び込んできた。
それが利尻山だった。

標高1721m、利尻島の中央に聳える火山・利尻山、別称「利尻富士」。日本最北の百名山で、頂を目指し全国から登山者が集まる。主な登山コースは二つあるが、どちらもコースタイム約10時間となかなかの難易度である。
甲板から見えるその大きさに、不安と期待が入り混じる。
約1時間半の船旅を満喫し、利尻島に上陸。
その日の夕方、無事 利尻入りした二人と合流した。
明日早朝出発であるにもかかわらず、キャンプ場で晩酌。ワンゲル時代には禁止されていた登山前夜の飲酒に、ちょっとだけ悪いことをしている気分になる。深夜、親の目を盗んでアイスクリームを食べるみたいな、あの感じ。「明日は楽しみだねえ」「待ちきれないねえ」と遠足前夜の子供のように、明日への期待を高めつつ、それぞれのテントに戻った。
山登りの日の朝
翌朝、カアアアー カアアアーと鳴き止まぬカラスの声のやかましさに、流石に目をつむっていられなくなる。最悪の目覚めである。
「ロマ男!ロマ男!」と心の中で叫んでみるが、ロマ男のテントからは寝息しか聞こえてこない。
チッ!(まあ冗談)
「じゃあモジャ男!モジャ男!」とまた心の中で叫んでみるが、どうやら起きて、カラスを追い払ってくれる人は誰一人いないようだ。
人任せはやめ、ノロノロとテントから起き出し、「シャァァァーーッ」とカラスに向かって威嚇する。
カラス追い払い作戦 大成功。
しばらくすると、上瞼が半分落ちた状態で、寝癖をつけた二人がモゾモゾとテントから出てくる。かつて合宿では、「起床!」の掛け声と共に、軍隊さながら飛び起きていたはずだが、その面影はもうない。それぞれが勝手に起きて、勝手に朝ごはんを食べ、食べ終わった人から歯を磨く。やがて、なんとなく全員の動きが揃い始め、「そろそろ出ますか」という空気が自然と生まれた。
ついに私たちの利尻登山が幕を開けた。
登り
登山道をくぐり しばらくの間は樹林帯を進む。
天気予報は悪くない。自称晴れ男のモジャ男も「任せといて」と得意顔。しかし、木々の隙間から覗くどんよりした空模様に、不安を拭えない。

だがそれどころではない。
驚異的ハイペース。それでも二人はずっとぺちゃくちゃお喋りをしている。「それで少しは疲れろ〜」と思おうも叶わず、私だけがはぁはぁと息をあげている。ワンゲルを卒部して1年、なまり腐った体というのは恐ろしいものである。
先陣を切って、ぐんぐん進んでいくロマ男。
その後ろを歩くモジャ男、ロマ男の軽妙なトークに気持ちの良い相槌を打ちながら、いやはや後ろのやつはちゃんとついてきているのかと、たまにチラリと振り返る。
その後ろを歩く私、足手纏いと思われるわけにはいかないと、モジャ男が振り返るタイミングで息を整え平静を装う。
利尻山とご対面
登り始めてから3時間、標高1120m地点にある第二見晴台に至る。
樹林帯を抜け、ここから利尻山がどーん!と見えるらしいが、残念ながらガスに覆われ、その姿を拝むことはできない。

――――と思った、その瞬間。
利尻山を隠していた雲が風に乗りどんどん流れていく。ついにその姿を現した。
圧倒的山の迫力。そしてなんというタイミング。モジャ男は本物の晴れ男だった。どうやら絶対に晴れさせたい山行は、モジャ男を呼ぶといいらしい。

「っしゃ行くか!」と今にも言い出しそうなロマ男に戦々恐々としつつ、「ほら見て、綺麗だね〜!」「ねえ!写真撮ろうよ!」と茶を濁し、結果20分の休憩確保に成功した。
山頂に立つ
もう眼前に聳える利尻山を見て歩く余裕はない。前を歩くモジャ男のかかとが視界からいなくならないようにと、ひたすら足を動かした。
約1時間半の苦行に耐え、遂に利尻の頂に立った。

これまでの山行では、四方を山々に囲まれ、そのいちばん高い所に立つという高揚感があった。
けれど今回は違う。
山を取り囲むように、果てしなく広がる海。
その中心にぽつんと立つ自分。
なんと表現すればいいのだろう。まるで、地球のてっぺんに立っているような感覚だった。
やはり、利尻は現実離れした場所だったのだ。
下山
しばし山頂からの景色を満喫した後は、転がり落ちるように一気に駆け降りた。
二人のハイピッチは相も変わらずで、17時下山予定だったが、15時にキャンプ場にたどり着いた。
キャンプ場にはキッチンカーがいて、そこで私たちはご褒美のシュワシュワを手に入れた。キンキンに冷えたシュワシュワが、疲れ切った身体に染み渡る。
フワフワ心地でテントに戻る足は千鳥足かな?

おわりに
利尻を訪れてから約1年が経ち、自身の記憶と少しの写真を頼りにこの旅を振り返った。
そのため、記憶違いや抜け落ちている部分もあると思うが、その点についてはご容赦いただきたい。
また、この文章には書ききれていない(あえて書いていない)心に強く残っている出来事も多くある。それはまたの機会に。
ほとんど計画を立てずに始まった利尻旅だったが、ロマ男のノリとモジャ男のウンのおかげで、良い方向へと転がり続けた。
かけがえのない経験を共にしてくれた二人に心から感謝を。
最後までお読みいただきありがとうございました。


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