山遠征|大雪トムラウシ縦走#04(完結) 旭岳

はじめに

みなさんこんにちは。とらちゃんです。

『山遠征|大雪トムラウシ縦走』では、私が所属する大学のワンダーフォーゲル部 2024年の夏合宿で行った大雪トムラウシ縦走の全貌をお届けします。

#03では忠別岳避難小屋から忠別岳を経由し白雲岳避難小屋に至るまでの様子をお届けしました。#05では合宿最終日、白雲岳避難小屋から旭岳を経由して姿見ロープウェイ駅に下山するまでの記録をまとめました。どうぞお楽しみください。

DAY5 白雲岳避難小屋〜姿見ロープウェイ

この日は爆風が吹き荒れる中での出発となった。体を風上側に傾けることでもってやっと真っ直ぐ進めるくらいで、少しでも気を抜くと簡単に吹き飛ばされそうなので、一歩一歩慎重に足をすすめた。

白雲分岐を過ぎて北海岳まで出ると、そこからは砂礫の尾根道を進む。風を防ぐものは何もなく、爆風で呼吸困難、耳も割れるんじゃないかと思うほど困難な道のりだった。

旭岳山頂で集合写真を撮るため、先行していた私たちのパーティーは、裏旭キャンプ場で他のパーティーが来るのを待つことにした。裏旭キャンプ場は鞍部に位置しているため、風が吹き抜ける。歩いているうちはまだよかったが、立ち止まった瞬間から体は急速に冷え始め、このままじっと待っていれば低体温症になってもおかしくないと感じるほど、風が体温を奪っていった。

私たちはお湯を沸かし、熱いお茶を飲んで寒さに耐えようとしたが、到着の見通しが立たないパーティーを待つのは、精神的にもなかなか堪えるものがあった。待ち続けること30分――「もう先に行ってもええんちゃう?」という言葉が口をついて出そうになった、その瞬間、他のパーティーがガスの中から姿を現した。

「いやあ、お疲れさん!」
そう声をかけると同時に、旭岳山頂付近を覆っていた雲が一気に流れ、青空が顔を覗かせた。

旭岳

絶好のチャンスを逃すまいと、私たちは最後の力を振り絞って山頂を目指す。
裏旭キャンプ場から旭岳山頂までの道は、気を抜けば転がり落ちそうなほどの『超』急登で、しかも足元はザレていて不安定。

トムラウシ大雪縦走の最後の山場

体力の消耗が激しく、こんなの正直、デカザックを背負って登るような場所ではない。地面にへばりつくように、慎重に一歩一歩足を運び、なんとか山頂にたどり着いた。

「ウヒョー」という声が聞こえてくる

山頂からは360度ビュー。雲の切れ間から雄大な北の大地が顔を覗かせる。これこれ、これが見たかった。これを見せたかったんですよ。

旭岳山頂からの眺望

姿見ロープウェイ駅

山頂からの景色はご覧の通り息をのむほど素晴らしいものだった。が、風が非常に強く、ただ立っているだけで体力を消耗するため、長居することは許されず、後ろ髪を引かれる思いで山頂を後にした。

足早に下り、無事姿見ロープウェイ駅に到着。空は雲ひとつなく、風も穏やかで、駅周辺の散策路はたくさんの人で賑わっていた。

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姿見の池にうつる旭岳

ここからロープウェイを使わずに下山することもできるのだが、コースタイムや疲労度を考慮してロープウェイを利用することに。姿見駅から山麓駅まで、10分ほどの空中散歩を楽しむ。

山麓駅の2階には食堂があり、バスの出発まで少し時間があったので、そこでラーメンを注文。これが下山後いちばんの楽しみだ。

いつもは頼まないチャーシュー麺 体がカロリーを求めている

湯気の立つスープを一口すすると、疲れた体にじんわりと染み渡っていく。程よく縮れた卵麺が、濃厚な豚骨醤油スープと油をしっかりとまとい──
……危ない危ない、フードライターになるところだった。とにかく、ガス欠寸前の体にカロリーを流し込み、バスに乗り込んだ。揺れる車内、満ち足りた気持ちと疲労とがゆっくりと混じり合い、ふわふわと意識が遠のいていく。目的地は下界の温泉、合宿の余韻に浸りながら瞼を閉じた。

最後に

これにて『山遠征|大雪トムラウシ縦走』は完結となります!

余談ですが、この『山遠征|大雪トムラウシ縦走』の記録を書き始めてから、気づけばもう1年が経ってしまいました。「忘れないうちに書き切らないと」という思いと、「そもそも文章を書くのは苦手だし腰が重いなあ」という思いの間で葛藤し、こんなにも時間がかかってしまったのです。今ではワンゲルも卒業し、どこか懐かしい気持ちで筆を取りました。

3年間のワンゲル人生の中でも、この夏合宿は間違いなく一番の思い出です。

改めて、ワンゲルに「ありがとう」を。そして、よく頑張ってくれた自分の体にも「お疲れさま」を。

長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。山行計画の参考にはあまりならなかったかもしれませんが、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。

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