はじめに
みなさんこんにちは。とらちゃんです。
『山遠征|大雪トムラウシ縦走』では、私が所属する大学のワンダーフォーゲル部 2024年の夏合宿で行った大雪トムラウシ縦走の全貌をお届けします。
#01では、大阪を発ってから4日目、ようやく始まった夏合宿の幕開けを振り返りました。#02では、南沼キャンプ場を出発し、トムラウシ山と化雲岳を越えて、忠別岳避難小屋に至るまでの記録をまとめました。どうぞお楽しみください。
DAY2 南沼キャンプ場〜忠別岳避難小屋
朝、男子テントから響く部長の「起床!」の声で目を覚ます。意識が朦朧とする中、シュラフをザックに詰め込みテントの外へ放り出す。入部当初は苦痛に感じていた朝の慌ただしさも三年目となれば慣れたものである。テントを畳み、朝食には後輩が作ってくれたサンドイッチを頬張った。昨日に比べて雲は多いものの、十分「晴れ」と言えるほど気持ちの良い天気だ。パッキングを済ませて体操をし、5時30分にテント場を出発した。
トムラウシ山頂までの道のりは昨日予習済み。とはいえ、ぺちゃくちゃとお喋りをしていると、すぐに息が上がってしまうので、口のチャックを閉めて、足元に意識を集中させる。山頂にたどり着くと、昨日のお留守番組から「おお〜」という歓声が上がった。

トムラウシから北沼まではゴーロ帯が続く。ルートを見失わないよう、岩に描かれた印を辿りながら慎重に下る。北沼は確実な水場ではあるが、濁っていたためスルー。さらに進んだ天沼の手前で大きな雪渓を発見。時間に余裕もあったので、雪を溶かして水を補給することにした。

雪渓からきれいな雪をお玉で削り取り、コッヘルに入れて加熱・溶解。沸騰させたのち、さらに浄水器を通して安全な水に仕上げる。分業型手工業を彷彿とさせるような、抜群のチームワークで取水作業を終えた。水を入れたポリタンを詰め込むと、ザックは一段と重くなり、肩にめりこむ。

その後しばらくは平坦で開けた道を進む。これぞまさに「カムイミンタラ(神々が遊ぶ庭)」とニヤニヤが止まらない。

ひさごのコルに到着。ここから化雲岳への登りが始まる。傾斜自体はそれほどきつくないものの、超重量級の荷物がボディーブローのように効いてきて、正直ヘトヘト。後ろを歩く同期のあーちんから熱烈な応援を受け、なんとか山頂にたどり着いた。化雲岳山頂には巨大な奇岩がドーンと構え、その向こうに広がる景色はまさに圧巻。この日のハイライトと言って間違いない絶景だった。

ひと休憩したのち五色岳方面へ出発。湿原に敷かれた木道の両脇には、綿毛になったチングルマの群生が広がっていた。
五色岳付近に差しかかると、ハイマツの密生地帯が続き、大きなザックを背負っての通過はひと苦労。枝が顔やザックに当たる中、修行僧の如く無心で突破した。

五色岳の山頂に立つと、トムラウシ山、忠別岳、そして旭岳が一望でき、これまで歩んできた道のりと、これから続く稜線が視界いっぱいに広がっていた。しかし疲労はすでに限界に達しており、景色をじっくり味わう余裕もなく、足早に山頂をあとにして忠別岳避難小屋に向かう。
重たいザックと疲弊した身体を引きずりながらも、気持ちは一刻も早く休息を取りたい一心。結果的にコースタイムよりも早く忠別岳避難小屋に到着した。
せっせとテントを立てて、夕食には無印のカレーを食べた。食当が色々な種類のレトルトカレーを用意してくれていて、後輩から選んでいくシステム。よって私(最高学年)が食べるものは自動的に決まるので、普段なら絶対手に取らないようなものが回ってくることもある。私は王道好きなので、変わり種が回ってきた時には「食べれるかなあ…」と不安に思ったりすることもあるのだが、誰かが言ったように、空腹は最高のスパイス。いつも腹ペコ餓死寸前で食べるものだから、割といけるじゃん!とペロリと完食してしまう。こういう予期せぬ刺激も、きっと人生の愛おしいスパイスなのだと思う。
日が沈み、次第に空が暗くなると宙には無数の星がポツポツと浮かび上がる。皆がテントの外にでてきて、寝転がり、空を眺める。けれど流石に冷え込みが厳しくなり、体が寒さに耐えきれず、再びテントに戻りシュラフに潜り込む。疲労の溜まった体がじんわりとほぐれていき、一瞬で眠りに落ちていた。
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